毒性弱いウイルス使う医薬、がん治療向け申請

宝ホールディングス子会社で製薬会社に試薬を提供しているタカラバイオは年内に、生物の力を借りてがんを治療するバイオ医薬品の製造・販売ができるよう、厚生労働省に承認申請する。認められれば、約40年にわたりバイオ研究の支援にたずさわってきた同社の初の薬となり、製薬会社への脱皮がかなう。タカラバイオはまず、皮膚の色素をつくる細胞やほくろががんに変化した悪性黒色腫(メラノーマ)の薬として申請する。国の審査期間が短くなる希少疾病用再生医療等製品として申請する。早ければ2019年に発売できる見込みで、大塚製薬に販売を委ねる。

自然変異で毒性が弱まったまま生きている「腫瘍溶解性ウイルス」を培養し、薬として使うのが特徴。がん細胞に感染して内部から壊す力がある。国内で実施中の臨床試験が良好な経過を示し、多くの抗がん剤が引き起こす正常細胞への影響はほぼみられないという。

このウイルスによるがん治療の技術は米アムジェンが製品化に成功しているが、競合は少ない。タカラバイオは10年秋に買収し日本の創薬スタートアップ企業からウイルスを使う権利を獲得し、がんが縮小する効果を確かめる試験を繰り返してきた。

メラノーマの日本での年間発症数は2000人近くといわれる。患者の多い膵臓(すいぞう)がんなどへ申請を広げていく方針。人間が持つ異物排除の力を促す免疫薬「オプジーボ」などとの併用で、がん退治の効果を高められると見込む。

タカラバイオの母体である宝酒造は1979年、医薬品開発に必要な遺伝子組み換えに使う国産初の酵素を発売した。製薬会社や大学にバイオ研究の試薬を供給したり、遺伝子解析を受託したりと支援サービスを実施してきた。18年3月期の連結売上高は323億円。

出典:日本経済新聞 2018年8月12日朝刊